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1. サイトの背景

能力に応じた教育を受ける機会

前回の最後に書いたとおり、高等教育を受けることへの当サイトのスタンスと近い理念が表された法規、規約を、今回からとりあげていきます。まず、日本の最高法規である憲法の、次の条文にふれます。

第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
(2) すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

各自の「能力」に応じた教育を受ける権利が誰にもある、ということですが、日本の実態を見ると、この「能力」の意味するところが、経済的能力(資力)を指し示すとでも解釈した方が良さそうな状況になっています。詳しくは、以前に学費の問題をとりあげた時の投稿より、これまでにも述べてきましたが、高等教育を受けようとする場合、学力が低くても入学できる大学は増えてきた一方、(授業料の高騰などから)資力が乏しければ知的能力は高くても大学へ進学できにくくなってきました。

この点、憲法では単に「能力」と記されているだけですが、個別の法律「教育基本法」に、以下のような条文があります。

第4条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
(2) 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
(3) 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

上で示したうち、第1項に「能力に応じた教育を受ける機会」とあるのは憲法のそれ(第26条 第1項)と変わらないものの、第3項で「能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者」に係る規定があり、ここで「能力」と呼んでいるのは経済的能力のことではないと分かります。

というより、そもそも第1項で「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地」によって差別されないとありますが、これは、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」により差別されない旨を記した憲法第14条で列挙(※)されている5つの項目に、唯一「経済的地位」だけ個別に追加して明記されたもので、いわゆる富裕層であろうと貧困層であろうと、誰でも、能力相応の教育を受けられるようにすることが謳われている、と考えられます。

…といった辺りで、字句にこだわったり、文言の解釈で争ったりするのに熱心な法学の世界に関連して、今回つづってきた内容もまた、それと似てきたような感があり、国内法については一先ずここまでで止め、次回、同様の理念を掲げた国際規約を題材に改めて続けます。

※ なお、この憲法第14条(法の下の平等)のように、条文のなかで具体的に幾つか項目を挙げて制限する法律に関しては、それが限定列挙なのか例示列挙なのか、といった問題もありますが、法学部の授業でもないので、ここでは置いておきます。

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