教養としての地域研究

投稿者: | 2016年1月9日

前回は、「リベラル・アーツ」をテーマに、「教養」と関連付けながらとりあげました。そこでもふれた東京大学教養学部に、アジアについて学ぶのに適した分科(地域文化研究分科ほか)があることは当サイトで既に述べた通りですが、他の主要国立大学でも、旧教養部を母体とする学部に、似たような学科・専攻等がよく見受けられます。例として、これまでに挙げたなかでは、名古屋大学情報文化学部(社会システム情報学科)や神戸大学国際文化学部(地域文化論講座)があり、この他、京都大学総合人間学部でも、(以前あった国際文化学科のなくなった今も)同様の科目履修はできるでしょう。

東京大(地域文化研究)や神戸大(地域文化論)の例に見られる学問分野は、日本では一般に地域研究 (Area Studies) と称されることが多いようです。ちなみに日本以外でも、例えばマラヤ大学(マレーシア)の Faculty of Arts and Social Sciences に東アジア研究 (East Asian Studies) 等の専攻がありますし、その他でも、チュラロンコン大学(タイ)にインターナショナル・プログラムとして東南アジア研究 (Southeast Asian Studies) 専攻が、またフィリピン大学の旗艦校ディリマン校も Asian Center にアジア研究 (Asian Studies) 専攻のプログラムが設けられています(ただ、後者の二校に関しては、いずれも大学院レベル(修士課程)だけで、学部には無さそうです)。

さて、この地域研究ですが、人文、社会科学ほかディシプリンの別で見てみると、特に上掲のような日本国内の大学の場合は、教養学部や旧教養部の学部(以下、教養系学部)に置かれていることもあってか、文学や歴史学、人類学、社会学といった、人文系に近い科目を中心に提供されるケースが少なくありません。その結果、たとえ先述の専攻へ所属し、将来性の期待されるアジア新興国について学んできていても、こうした国々の経済や法律など、実社会へ出て役立つ方面には疎いまま卒業してしまう、といった事態も起こり得ます。

そうでなくても、とりわけ教養系学部のように種々雑多な科目が開講される所では、各学期、その時々の興味本位や履修しやすさ等から安直に科目を選んでしまうと、結局4年間で何を学んだのかよく分からない大学生活にもなりかねません。そこで次回より、教養系学部で学ぶ場合に科目を選択・履修していくうえで気をつけたい点など、幾らか整理していきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA