AUN: ASEAN大学ネットワーク

投稿者: | 2015年12月17日

前回、東南アジア諸国間のモノ・カネ・ヒトの移動に関して、そのうちヒトについては、産業界での動きを中心にふれました。そこで今回は、当サイトで主として扱っている高等教育界でのヒトの流れをとりあげていきます。

ここで最初に挙げるべきものとして、AUN (ASEAN University Network) があります。このネットワークは、ASEAN加盟国の大学が集まって1995年に創設され、今年(2015年)で20周年を迎えました。創設当時は11大学が加わっていましたが、今までに10ヶ国の30大学へ拡大してきています。いずれも各国を代表するような名門大学が中心で、これまでに当サイトで言及してきたトップ大学ももちろん含まれます。

以下、そうした最高学府を個別に振り返っていきます。手始めに、今や東アジアで最も経済発展の進んだシンガポールシンガポール国立大学は、ASEANで唯一「高所得国」に分類される国でもあり、QSによる大学の世界ランキングでも、はたまたコスト(学費、生活費など)の面でも、他の加盟国より、そして日本よりも高いレベルになっています。

シンガポールに続き「高位中所得国」と位置付けられるマレーシアとタイのうち、まずタイでは、チュラロンコン大学マヒドン大学といったトップ校で、通常の国語(タイ語)による課程とは別に、英語での課程が設けられています。ただ、そうした課程では日本の国公立大学より授業料が高く、標準的に見て、前者(チュラロンコン)で年間100万円を少し上回る程度、後者(マヒドン)で逆に100万円を幾らか下回る程度の学費がかかってきます(1バーツ3.6円で換算)。

他方、かつてイギリスの植民地だったマレーシアは、市中では英語も用いられることが少なくない割に、国立大学(特に学部)では、政府の方針からマレー語による教育が奨励されてきました。同国トップのマラヤ大学でも、グローバル化に向けて大学院レベルでは留学生を増やしてきたものの、学部レベルでの外国人学生の割合は限定的です。

次いで、一時期アメリカの植民地だったフィリピンでは、国内首位のフィリピン大学をはじめ英語で教育される大学が多く、また、外国人学生に対する授業料も比較的低いですが、風水害ほかインフラ等に不安があります。この点、前掲のフィリピン大学が、先述のような国々に後れを取ってきたグローバル化でのキャッチ・アップへ、現在、開発計画の進んでいる新都市にキャンパスを建設する構想もあり、今後の展開に期待されます。

それ以外にも、インドネシア大学やブルネイ・ダルサラーム大学のほか、いわゆるCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)各国のトップ校まで、AUNに加わる大学はASEAN加盟国を全て網羅していますが、参加校の間での単位互換など、実際の協力・連携体制も整えられてきています。ちなみに、このAUNの単位互換制度には、ASEAN加盟国だけでなく日本でも入っている大学があり、次回、そこから続けます。

 

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