前回、財政悪化の続く日本と対比的にシンガポールの例を挙げましたが、最近、このシンガポールをはじめとするASEAN(東南アジア諸国連合)への注目が高まってきています。先月(2015年11月)後半には第27回ASEANサミットがマレーシアの首都クアラルンプールで開かれ、本年末でASEAN共同体 (ASEAN Community) を正式に発足させることが確認されました。それによって、各加盟国も今後いよいよ力強く成長していくことが期待されています。
ところで、この共同体は、大きく APSC (ASEAN Political-Security Community), AEC (~ Economic Community), ASCC (~ Socio-Cultural Community) の三つから構成されます。また、よく欧州連合 (European Union) と比較されますが、「Community」と「Union」の違いにも表されるように、欧州のそれよりは緩やかな連帯、協力関係が志向されています。
そもそもASEANは、今から約50年前の1967年に、非共産主義 (non-Communist) の東南アジア諸国5ヶ国によって結成されました(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)。それから、1984年にイギリスより独立したブルネイが6番目の加盟国となり、冷戦終結後の1990年代にはベトナム(1995年)、次いでミャンマーとラオス(1997年)、続いてカンボジア(1999年)が加わり、現在の10ヶ国体制になりました。
半世紀前の結成当初は、加盟国の政府高官が時おり会って話し合うぐらいのフォーラムの場…といった程度でしかなかったASEANが、それ以来、今までに加盟国の数だけでなく、その機能、役割等の面でも徐々に成長を遂げつつ、今月末には共同体として第一歩を踏み出すまでに至っています。
そこで今月は、まずASEANに関して集中的にとりあげていくこととし、次回、これが結成された1967年前後の経緯、背景を簡単にまとめたうえで、次々回より、それ以降の歴史や、今般の共同体設立へと繋がる近年の動向、等々について順次ふれていきます。