政権党と地方

投稿者: | 2015年11月17日

前回は、戦後、自由民主党が農村部や地方都市で強い支持基盤を築いてきたことにふれましたが、そうすると自然、このような地域に多い産業と自民党との結びつきも濃くなることが推し量られます。そこで今回は、例として建設業との兼ね合いで公共事業についてとりあげ、続いて農業関連の問題へと、以下に綴っていきます。

まず、「穴を掘って埋めている」だけとか、「熊しか通らない道路」をつくっているとか、いろいろ言われる公共事業ですが、今までに述べた通り、こうした事業には、さしたる産業の発達していない地方へ金を落とすべく行われてきた、という性質もありそうです(※)。それこそ、昭和の高度成長の最中、それに応じたインフラ整備を求められていた時代と比べれば、より必要性の低い公共事業ばかり増えていくようになるのも、ある意味で当然の帰結でしょう。

この点、さすがに近年では、日本の財政悪化もあり、そうした公共事業は全体として削減されかけてきていました。しかし、2010年代へ入ってからは、東日本大震災以降の復興特需に加え、2020年の東京オリンピック開催が決まったことで、それへ向けた新たな建設プロジェクト等まで計画されたりと、既に人口減少へ転じた日本にありながら、工事の需要は当面しっかりとありそうです。

とはいえ一方で、高度成長の最盛期から半世紀が経とうとしている今、当時整備されたインフラ設備の老朽化も進んできており、そろそろ、その補修や取替が必要になってくる頃合いです。もっとも、これは以前から分かっていた話で、かつて筆者が学部時代に受講した科目でもこの問題へ言及されたことがあります。ところが現実には、それに要する財源の蓄えどころか、逆に公的債務を増やし続けてきたなかで、そうした時期へ差し掛かっていることに危惧の念を禁じ得ません。

 

次に、農業についても少しふれておくと、最近にわかに盛り上がってきた問題の一つに農協改革があります。農業も、「補助金漬け」だの保護し過ぎだのと何かと批判の対象にされてきましたが、旧来、(そうした補助金等の見返りかどうかはともかく)いわゆる組織票など、政権与党を支えていくのに農協が一定の役割を果たしてきたであろうことは想像に難くありません。

これまでも、たとえ仮に政府からの援助へ依存してきた農業関係者が数多くいたとしても、他方で、できるだけ補助金等には頼らず、品質改良など幾多の自助努力で、高くても売れる農産物を開発したり、マーケティングで新たな客先を開拓したり、日々、創意工夫をこらしてきた人々も少なからずいたはずです。補助金にまつわる今の実状がどうであれ、後者を今後どれぐらい増やしていけるかに期待されます。

 

※ 地方における公共事業等への依存に関しては、例えば『地域経済レポート 2001-公共投資依存からの脱却と雇用の創出』(内閣府)で、その20世紀末にかけての動向が説明されています。

 

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