前回、概して成長性の高そうなアジア諸国と対比的に、日本を「衰退国」 (Declining Country) と書きましたが、さて実際のところ、日本は衰退しているのでしょうか。そこで、手始めに今回この点を少し突っ込んで見ておいてから、次回以降、前回の最後で予告したように具体的な話へ入っていきたいと思います。
まず、これまでに当サイトでとりあげてきたなかでは、以前、神戸大学についての投稿で神戸港にふれ、かつてアジア最大の貿易港だった神戸が、1980年頃から香港、シンガポールに、そして1990年代には近くの釜山(韓国)にも追い抜かれたことを述べました。その後、1995年の震災によりコンテナ(海運貨物)の取扱量が大きく落ち込んだ時期もありましたが、次第に回復し、直近の年間取扱量で約260万TEU (Twenty-foot Equivalent Unit) と、震災前の1990年代初頭の水準へほぼ戻っています。しかしこの、四半世紀前と変わらない水準…というのが曲者で、その間、世界的な貿易の拡大に伴い、件のシンガポールや釜山の他、中国の主要港まで飛躍的に発展し、各港とも取扱量を伸ばしてきたなか、昔と変わらない神戸も、低成長に止まってきた日本の他港も、国際的な海運の世界では最早ただの「ローカル港」になりつつある、といったところでしょうか。
次に、当サイトで中心的に扱っている大学に関しても、国際的なデータベースに収録される世界の論文数が年々増加してきており、欧米主要国の他に中国や韓国も論文数が伸びてきているなか、日本は、前世紀末より伸び悩み、それほど全体として増えていないそうです(※)。これまでもQS (Quacquarelli Symonds) の世界ランキングなどに言及してきましたが、そんな様では、日本の大学の低迷も仕方ないのかもしれません。
海運とか論文とかの話だけで終わるのも何なので、最後に、もう少し経済的な色彩の濃いことを書き加えておくと、一国の経済規模に関わる日本の名目GDP (Gross Domestic Product) も、多少の出っ張り引っ込みはあるにせよ、この「失われた二十年」の間、1990年代からあまり変わっていません。その間、中国をはじめ新興国等の経済成長は言うに及ばず、成熟国でも、例えばアメリカなども二十年前より倍にはなっているというのにです。
上で挙げた三つに関して言えば、日本は横這いになっているだけで、絶対的に見て下がっていたり、減っていたりする訳ではありません。しかし、先へ進んでいる人から見れば、立ち止まっている人は後退して見えるように、多くの海外諸国から見ると、相対的に日本は衰退して映りもするでしょう。いずれにせよ、日本の今までの足踏み状態さえ、この数十年にわたって国債等を大量に発行し、その借金で現在の体裁を少しでも保とうとする一方、将来へのつけを増やし続けてきた結果としてあるものです。いつか限界が来て、それを続けられなくなった時、いよいよ名実ともに「衰退国」と化すおそれはあります。
※ 参照記事(JBpress): http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44590/ (2015年11月4日 アクセス)