かつて日本で英語の試験と言えば、学校での定期テストや入試以外では日本英語検定協会の実用英語技能検定(英検)が一般的でした。中学生、高校生向けだと今でもそうなのかもしれませんが、大学生や社会人については米国 ETS (Educational Testing Service) の開発した TOEIC (Test of English for International Communication) の方が主流になってきています。また、留学等の目的で受けるには、前掲のETSが運営する TOEFL (Test of English as Foreign Language) と、英国の IELTS (International English Language Testing Service) があり、後者は先述の日本英語検定協会が日本国内での運営を担っています。
このなかでTOEICに関しては、リスニングとリーディングのパートから成るテストと、それとは独立して、ライティングとスピーキングの技能を測るテストが別にあります。日本ではそのうち前者のテストが特に広まってきており、860とか730以上のスコアを示せると、就職活動や入学選考でアピール・ポイントにはなる場合も少なくありません。大学院等の選考ではともかく、採用活動の場でTOEICのスコアが評価されるのは、(少なくとも、TOEFLやIELTSと比べて)ビジネスのシーンを模したリスニングやリーディングの問題が多く出されることも背景にあるようです。
一方、TOEFLとIELTSについては、いずれも4つのパート(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)全部そろって1つのテストとして実施されています。TOEFLは英語圏への留学希望者向けの試験ですが、IELTSの方は、同様に留学用の Academic Module と、移住希望者等のための General Training Module と2種類のタイプがあるので、もし受験する際には間違えて申し込まないよう要注意です。
IELTSの受験料は25,380円(税込)であるのに対して、TOEFLの料金は230 USドル(1ドル120円で計算して27,600円)と、双方とも似たような金額ながら、昨今の円安ドル高でIELTSの方が少し低価格になっています(※)。この他、両者の違いを比べてみていくと、日本で受けるTOEFLは通常 “iBT” と称されるインターネット・ベースの試験となっており、全てPC端末での入力やクリック、音声の吹き込み等によって行われるのに対し、IELTSの方は紙ベースで、鉛筆で書いて答えていくのが基本です。なお、スピーキングに関しては、TOEFLだとマイクの付いたヘッドホンを装着して、設問の指示を聞いた後に短時間のポーズがあり、この間に考えた内容をそれから一定の時間内で話して吹き込む、といったことが続きますが、IELTSでは、小さなブース等において一対一でつく試験官から尋ねられたことへ答えていきます(IELTSでも、試験官との遣り取りは全て録音され、それを別の採点者が聞いてチェックするようです)。
以上、TOEFLとIELTSに見られる明らかな違いを挙げてきましたが、両者には他でも少し差があります。そこで、リーディングのパートを例に、次回へ続けていきます。
※ いずれも2015年10月15日現在の料金です。TOEFLの方は国別にUSドルで決められているため、為替レートの変動による影響を受けます。また、値上げなど価格改定にも、IELTSともども留意ください。