前回、日々の学習に関し、数学を例にとりあげました。そこで今回は、他の主要な教科のうち英語を中心にふれていきたいと思います。
戦後日本の学校教育で、英語は中学1年次から教わり始めることが長く続いてきました。高校・大学入試でウェイトを重めに課されることも珍しくなく、授業でも自宅での勉強でも、英語の学習に相当な時間をかけてきたはず…にもかかわらず、結果として、(一定の文法知識と、英文読解、また人によっては英作文も多少できる割に)英語で喋れず、聞き取りも苦手な高卒者や大卒者が数多く輩出されてきました。
これは、戦時中、敵性語として英語の使用が禁じられるなどして、終戦時、英語を話せる人材が乏しかったなか、日本各地の学校で英語の授業を始めるのに、文法書を片手に英文法ぐらいしか教えられなかった、といった事情もありそうです。ともあれ、戦後、文法ほか英語の読み書きばかりが重視され、リスニングやスピーキングへはそれほど注意を払われてこなかったことには違いありません。
この点、前世紀末までには変革(?)の兆しも少し見られ、一部の大学では英語の入試でリスニングも導入されてきていました。とはいえ、まだ本当に僅かの大学だけで、国公立大学では、東大(前期日程)のほか、京大でも一部の学部のみ…たしか後期日程の試験で課されていた程度のはずです。もっとも、東大入試のリスニング試験にしても、当時は各パッセージとも3回ほど音声を流されていたように記憶しています(あまり聞き取れなくても、フレーズや単語レベルで各回いくらかずつでも拾えると、それを3回分つなぎ合わせて考えれば何とかなる(場合もある)ぐらいの、まだ易しいレベルのものでした)。
今世紀へ入って、センター試験の英語にもリスニングが導入され、また学校の教育現場でも読み書き重視からの転換が見られるようになってきています。とはいえ、残るスピーキングの技能については、センター試験でも、前述の東大入試でもまだ導入されておらず、「(日本人は)英語を読めても話せない」などとも揶揄される状況から脱却できるのはいつか、待たれるところです。その点、スピーキングもリーディング、ライティング、リスニングと同様に課される国際的な英語の試験に関して、次回へ続けます。