前回、日々の学習について、その「量」(勉強時間)の観点から主に書きましたが、今度は「質」の方に注目して、続けていきます。とはいえ、今回とりあげるのは集中力などの問題ではなく(それも重要ですが…)、それ以外の、勉強の仕方に関してです。
例えば、一口に数学の勉強と言っても、ひたすら計算問題をこなして練習し続けていくこともあれば、証明問題など、論理的な思考力や発想力にフォーカスしていくこともあるでしょう。
また、レベル別に見ても、仮に数学の特定の単元を勉強するとして、教科書に解法が載っている例題の数値を変えた程度の簡単な練習問題から、果ては東大・京大入試のような(高校生向けとしては)国内最高水準の問題まで、どのレベルに取り組むかで、勉強時間自体は同じでも成果は様々に変わってきます。とりわけ、このうち前者(解答例が記された例題の類題)については、その単元の内容を本当はよく理解できていなくても、最低限の計算能力と、例題の処理方法さえ覚えていれば答えを出せてしまいます。これでは、同様の問題をいくら多くこなしたところで、場合により、(本人は分かったつもりになっていても)実は分かっていないか、ごく表面的な理解に止まる可能性も多々あります。
ひとまず感覚をつかむ等の目的で、当初そうした練習問題に幾らか当たるぐらいなら良いですが、その後は、適宜、学習の進み具合と消化(理解)の程度に応じ、同じ単元でも違った勉強へ変えていくことが大切です。これで上手にPDCAサイクル (Plan-Do-Check-Act cycle) を回していければ、人によっては、放課後2時間程度の勉強でも高い成長を遂げていけるでしょうし、そうでなければ、毎日3時間からそれ以上の時間を費やしたところで、大した成長は期待し難いかもしれません。
なお、数学の学習に関し、とりわけ計算問題ぐらいなら、練習量の蓄積とともに、自分は大体どの程度の時間で何問こなせるか分かってくるはずです。それによって、毎日の進捗管理も、計画を立てるのも次第に容易になってくるでしょうが、一方、取り組む問題の水準を上げて入試レベルの問題が中心になってくると、端から自分で考えて解こうとすれば1問にすら1時間から数時間かかってしまうことも、特に、少なくとも最初しばらくは出てきて不思議ではありません(※)。
それを乗り越えて、次第に、論理性のみならず連想力、着想力といったようなものまで磨かれてくるものだと思います。他方、こうした鍛錬を何年か続けてみて、なお自分に目立った進歩が見られない場合は、すっぱり方向転換して知的分野以外で自分の偏差値なり適性が高い領域を他に探し、たとえ高校卒業後に進学を希望するにせよ、その領域で良さそうな(短期)大学・専門学校等の候補を、職業教育の観点から検討してみるのも一案です。
※ この点、思考力よりも記憶力に訴え、そうしたレベルの難問まで、まず自分で考えて時間をかけるより解説・解答例をさっさと見て、片っ端から解法を覚えてしまえば良い、といった詰め込み型のスタンスの人もいるようです。