前回の投稿に関連して、今日はまず、日経ビジネスONLINEで昨年末に掲載された米倉誠一郎教授(一橋大学)のインタビュー記事から、一部抜粋して以下に引用します。(※)
現地パートナーのマヒンさんの下で働いていたダッカ大学の学生と話をする機会があり、「大学卒業後、どうするんだ?」と聞いてみたのです。彼は「公務員か、銀行員になりたい」と言う。そこで僕はちょっと説教した。「君みたいなエリートがジョブシーク(就職活動)していたら、君たちより恵まれない人間はどうするんだ。君たちはジョブクリエイトしなくてはいけない」とね。これは、グラミン銀行創設者のムハマド・ユヌスさんもいつも言っていることでもあります。
この記事は、「バングラの”ドラゴン桜”英国へ」と題した連載の第9回に当たり、e-Educationという、バングラデシュから活動を始めた日本のNPOがとりあげられています。e-Educationについて、ここでは簡単にだけ説明を加えておくと、裕福でない家庭の子でもダッカ大学(同国最高の大学)へ進学できるよう、同校の受験対策の授業を撮ってDVD等に録画し、農村など地方でも視聴できるよう配布したうえ、その学習を支援していくことから始まったNPOです。後に、フィリピンほか幾つかの新興国、途上国でも同様の活動を展開しだしていますが、現状、日本国内ではそうした活動の広報等が中心で、元祖「ドラゴン桜」に倣った東大受験のサポートまではされていないようです。
さて、上で引用した米倉教授の話へ戻ると、バングラデシュの大学生に言えることは、日本の大学生にも言えて然るべきではないかと、このように思います。東大もそうですが、他の旧帝大の学生も含め、ジョブシークより他に自分たちの担うべき役割を果たしていくことが、求められてきているのでないでしょうか。
前回に述べた通り、かつて(とりわけ高度成長時代)は、大学卒業後に官公庁や大企業へ就職して、そこでの活躍を目指していけば良く、それなりに合理的でもあった…かもしれませんが、今では、こうした話もあまり妥当性がなくなってきています。さりとて、ではバングラデシュと同じくジョブクリエイト(雇用の創出)を目指すのが良いかと言うと、日本の場合、それもまた違うでしょう。今でさえ、小売や外食、ケア(介護)業界など、若い働き手の不足感が出てきている産業も少なからずあるなか、この先、人口減少と少子高齢化の進むに連れて人材不足は一層深刻に、かつ他のセクターまで広がっていくのは想像に難くありません。そうした条件を考えると、さらにジョブクリエイトをしたところで、有難みは乏しいか、ともすれば人材の問題を悪化させかねません。
では、どうするのが望ましいのか、今はまだ具体的に思い浮かびませんが、この点に関しては、当サイトの主題に係わるものとして今後も継続的に取り組んでいきます。とはいえ、(1)目指すべき具体例はまだ無くても、該当しない例の方は幾つか具体的に挙げられます。また、(2)例えば東大卒の社員の有能/無能を題材にした既存の記事なども数あるなか、そもそも彼らに何が期待できるのか、という問いも出てきそうです。そこでまず、次回に(1)をとりあげ、続いて次々回(2)に関する当サイトでのスタンスを明らかにしたうえで、それから先の投稿へ続けていきたいと思います。
※ 出典(日経BP社): http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141217/275280/ (2015年9月8日 アクセス)