日本でアジアを究める: (8) 九州大学

投稿者: | 2015年8月29日

1. 九州大学 総説

旧帝大のなかで最後にとりあげる九州大学は、アジア大陸に最も近い旧帝大という立地上の特徴もあり、かねてからアジア学長会議を提唱して他国の大学と接する場を持つなど、アジア諸国の大学との連携を強めてきました。その点、今でも例えば AsTW (ASEAN in Today’s World) の短期留学プログラム等を通じ、学生に対しても国際交流の機会を提供しています。

2. 九州大学の学部

続いて学部別に見ていくと、まず社会科学系で目立つものとして法学部の GV (Global Vantage) Program があります。当該プログラムは、入学後も英語での学修能力等を強化していきつつ、在学中に交換留学や数週間程度の海外エクスターンシップへ赴くもので、後者の派遣先にはシンガポール国立大学、マラヤ大学チュラロンコン大学、アテネオ・デ・マニラ大学が含まれています。このプログラムは、修士課程(LL.M.)までの一貫教育が基本らしいですが、大学院へ進学せず学部卒業までで止めることも選択できるようです。一方、経済学部にはそれ相当のプログラムが見当たらないものの、開発経済や世界経済、あるいは国際ビジネスといった科目を履修しながら、所期の目的を遂行していけるでしょう。この点、後述するソーシャル・ビジネス・フォーラム・アジアなどの機会も活かせるはずです。

他方の人文系について、文学部では、ディシプリンとして地理学や社会学の含まれる人間科学コースで学ぶのが良いように思われます(ここで東洋史学のある歴史学コースを挙げないのは、前回、名古屋大学についての投稿で「東洋史」に関して書いたことを参照ください)。また、教育学部には教育学系で国際教育文化コースがあります(名大の教育学部にある国際社会文化コースと、名称が妙に似ています…)。

3. 補説 - ソーシャル・ビジネス

前述のソーシャル・ビジネス・フォーラム・アジアに関連して補足しておくと、九州大学は2007年にムハマド・ユヌス博士(2006年 ノーベル平和賞 受賞者)率いるグラミン・ファミリーの組織と交流協定を結び、2011年にはユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターも設立しました。件のフォーラムは、この研究センターを中心に同年より毎年開催されてきているもので、複数のワークショップやセミナー等も含まれます。

ユヌス博士によれば、通常のビジネスでは金銭的、経済的な利益の最大化を追求するのに対し、ソーシャル・ビジネスでは、例えば貧困、環境問題等に係わる社会的な利益がもたらされることを重視する、と区別されています。ただ、この両者は決して水と油のように綺麗さっぱりと分かれるものでもないでしょうし、その辺り、日本企業の例も引き合いに出しながら来月に続けます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA