前回の投稿の最後に、近年ではASEAN原加盟国の通貨のうちシンガポール・ドルが最も強く、それにフィリピン・ペソが続く、と述べました。通貨のみならず、国家経済の発展状態でもシンガポールの強さは見て取れますが、その点、フィリピンの経済もいつになく堅調です。
実際、世界銀行のデータによると、フィリピンは2012年に年率6.8%の経済成長を記録し、1967年のASEAN結成以来初めて、原加盟国の5ヶ国中で1位になりました(※)(*)。たとえて言うなら、わずか5チームで行われる毎年のリーグ戦に初優勝するまでリーグ創設から45年、危うく半世紀が経ってしまいかねないところだった…それ位の状況でしょうか。なお、この年に限らずフィリピンの経済成長率は、かつて5割以上の確率で(=10年連続して見ると5年以上は)最下位になっていたものが2002年を最後に一度もならず、また、2012年以降も一昨年、昨年と他国より良好です。
その辺りの背景については先日フィリピン大学に関する投稿のなかで説明しましたが、とはいえ、足元の好調さを今後も持続できるのか、気になってくるところです。そんななか、折しもフィリピンのオンライン・メディア RAPPLER で「シンガポール建国50周年:『フィリピンはシンガポールのように成功できる』」(※※)と題する記事が今月上旬に出ていましたので、以下に少しふれておきます。
この記事では、シンガポール国立大学のリー・クアンユー公共政策大学院の院長ほかスタッフへのインタビュー等を元に、5つの要因(条件)から、フィリピンがシンガポールのように発展できる可能性を説いています。詳細は原典(英文)に譲るとして、5つのうち最初にメリトクラシーを挙げており、2つ目の、政治的な腐敗の問題と合わせて、フィリピンにとってもそうですが今日の日本にも切実なことと思われました。
なぜそう思うのか、フィリピンの事情にも言及しながら次回へ続けます。
※ 厳密には、アジア通貨危機で各国経済が軒並みマイナス成長に陥った1998年も、フィリピンは他国より小幅の変化率に止まっており1位と言えなくもないですが、ここでは無視しています(その他、各年の経済成長率など参照元については次の通り: http://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG/countries/)。
* 本頁の記事を執筆してから後のデータ更新等により、2016年末現在、上記の参照元(世界銀行)によるフィリピンの2012年の経済成長率は6.7%に少し減り、順位も5ヶ国中2位へ下がっている一方、翌2013年の成長率が7.1%で1位となっています。
※※ Ayee Macaraig, “SG50: ‘Philippines can succeed like Singapore'”, Rappler, http://www.rappler.com/world/specials/southeast-asia/101784-sg50-philippines-lessons-singapore (2015年8月18日 アクセス)