東南アジアと日本 大学進学への政策スタンス: 学費 (2)

投稿者: | 2015年8月11日

前回、日本の国立大学の授業料が年々また上昇しだす可能性について言及しました。

その点、近年は日本以外の主要先進国でも同様の変化が既に見られており、例えばイギリスでは、2010年代に入って大学の授業料を一気に3倍へ引き上げたりしています。これを受けイギリス国外の大学へ進学しようとする動きが出て、イギリス人学生の急増したオランダの大学がリポートされていたのを、数年前にニュースで見ました(*)。

同様にアメリカでも、大学で毎年のように学費の増加していくなか、外国人留学生も授業料が無料というドイツの大学へ進学したアメリカ人学生たちのことを、BBCが数ヶ月前に報じていました(※)。

ただ、このような対応をイギリス人やアメリカ人なら比較的容易にとれても、日本人にとっては、例えば英語の学習など、前々から計画的に準備していかないと難しいことです。しかし、そうした対策を進めていなければ、もし実際に日本国内の大学の授業料が増え始め、その値上げ幅が大きく膨らんでいった場合、家計の状況次第で、(たとえ知的に秀でていても)高校卒業後の大学進学が厳しくなりかねません。

 

もっとも、日本に限定せず海外の大学へも進学できる道を開くには、英語の問題の他にも、いろいろと備えていくべきことがあります。

学費や生活費など資金的な問題に限ってみても、仮に、たとえ留学先の国の大学授業料等が安定的で変わらなかったところで、その国の通貨と日本の円との為替レートが変動すれば、見込まれる資金の必要額もそれだけ違ってきます。この為替変動リスクに関しても幾らかの対策は考えられますが、いずれにせよ、外国為替の基礎的な知識を自ら得て、その市場の動向にも関心を寄せていくことが望まれます。

さらに言えば、留学先の候補の国で学費が引き上げられていく恐れもあります。実際、アジアにおける例として、シンガポール国立大学では、2009年度に入学した外国人の学部学生が徴収される授業料はシンガポール人学生の1.5倍でしたが、それから徐々に引き上げられ、2013年度以降に入学した外国人学生はシンガポール人学生の2倍の授業料(いずれも、政府の補助による軽減を受けられた場合の金額)を課されるようになっています(※※)。こうした政策的な変更にも、注意する必要があるでしょう。

 

…といった所で、何だかテーマ(前回より継続中の題) から内容が逸れてきた感もあり、一旦ここで切って、次回、先ほどふれたシンガポールに関連させつつ話を本筋へ戻し、このテーマでもう少し続けたいと思います。

 

(*)日本国内でも、例えば月刊誌クーリエ・ジャポン2011年11月号の61頁の記事でとりあげられました。

※ Franz Strasser, “How US students get a university degree for free in Germany”, BBC News, http://www.bbc.com/news/magazine-32821678 (2015年8月10日 アクセス)

※※ 参照元: https://share.nus.edu.sg/registrar/info/ug/UGTuitionCurrent.pdf (同上)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA