東南アジアで学ぶ: フィリピン大学

投稿者: | 2015年8月7日

1. フィリピン大学のシステム

フィリピン大学については、オンライン英会話の広まりに連れ日本でも知名度が上がってきました。一部、そうした宣伝等でフィリピン大学を「フィリピンの東大」と表現されたりしますが、どちらも国内最高の大学という点では正しいものの、厳密には不正確です。強いて日本で例えるなら、旧帝大の七大学を一つに統合した大学といった方が、より実態に近いでしょう。

かつてアメリカの植民地だった1908年に設立されたフィリピン大学は、2015年現在、ディリマン校、ロス・バニョス校、マニラ校、ビサヤス校、オープン・ユニバーシティ(遠隔教育制)、ミンダナオ校、バギオ校の七校 (constituent universities) と、セブにあるカレッジ (autonomous college) (*)から構成されます。

フィリピン全国各地の主要都市に散らばる上記のキャンパスのうち、マニラ首都圏の北東部にあるディリマン校が旗艦校としての役割を担っている一方、地方在住者にも遜色ない教育を提供すべくフィリピン大学としての統一的な運営が進んでいます。

2. フィリピンの経済システム

そのフィリピン大学をはじめ、フィリピンの大学(少なくとも、一定レベル以上の大学)では、テキスト等はもちろん、授業も基本的に英語で行われるのが原則です。そのため、フィリピンの大学生や大卒者は、総じて高い英語の運用能力を持っています。

この英語力を背景に、近年、活況を呈してきた国際的なBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界でフィリピンは急成長を遂げ、そのうちコール・センターのセクターでは2010年までにインド(※)も抜いて世界No.1に躍り出ました。

その裏で、オンライン英会話のようなビジネスも同様に拡大してきている訳ですが、それより早く、前世紀の終わり頃から、実際にフィリピンへ行って現地で英語を学ぶ英語留学も、徐々に広まってきていました。従来は、留学生も英語学校の運営者も韓国人が圧倒的に多かったですが、ここ何年かで日本人も俄かに増えてきています。

3. フィリピン留学の留意点

最後に、フィリピンへの英語留学ではなく大学への留学について、まず学費などコストの面では、外国人ということで徴収される費目 (Educational Development Fund for Non Filipino Students) が、おそらく留学先の学校にかかわらず一定額(学部レベルだと、2015年現在 300 USドル/学期)かかってきたりするものの、こうした国立大学で学ぶ限りにおいて、全体的にも大した金額にはならないでしょう。

他方、注意を要すべきは風水害で、フィリピン南部を中心に被害のひどかった2013年11月の台風については日本でも大きく報道されましたが、その前年も12月に台風で少なからぬ被害が出ていたりと、季節的な風水害の影響を受けやすい状態にあります。

フィリピン北部でも、例えば雨季の7~8月ごろを中心に、マニラ首都圏の相当な範囲で冠水した状態が複数日にわたって続く年もあり、首都圏の大学へ留学する場合などは、8月からの新年度を前にフィリピンへ移って早々、そうした状況に遭遇する可能性も無いとは言えません。

※ このBPOに関して、先進国の企業によるY2K(2000年)問題への対応業務の外部委託が、飛躍のきっかけと言われることが多いようです。その後も、多様な受託業務でインドが先行してきましたが、ことコール・センターの業務においては、後発のフィリピンがインドも凌ぐ目覚ましい躍進ぶりを示しています。

(*)追記事項:後年、カレッジから昇格し、フィリピン大学の八校目となっています。

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