「グローバル人材」という、お題目

投稿者: | 2015年7月19日

最近「グローバル人材」という言葉を、よく見たり聞いたりしますが、以前から産業界で、海外でも活躍できる人材を確保、拡充すべく訴えられてきたことのように思います。楽天ほか一部の企業で英語の社内公用語化が打ち出されるなどして、一層この動きを押し広める形になりました。

この点、元来、高度経済・産業を支えていくうえで不可欠な天然資源の乏しい日本にあって、海外との取引、または海外での事業や投資を通して外貨を獲得し、もって資源を買い付けて輸入していくことの重要性は、今さら言うまでもないでしょう。

さらに、少子高齢化が止まらず国内人口も減り続けていく日本の今後を考えれば、労働力の面でも消費の面でも(全体としては)国内市場の縮小していく一方になることが見込まれ、そうなると「海外」の重みはいよいよ増してきます。

 

このような流れのなか、文科省はじめ大学・高校等でも、「グローバル人材」育成を掲げて各々が施策をアピールしだしてきました。ですが、そうした教育界の動きを企業界の動向と照らし合わせてみると、そこに幾らかピントのずれが見えてきます。

より具体的に言えば、日本企業で注目度の高まってきている「海外」とは、近隣ではASEAN東南アジア諸国連合)や、その他の新興国など、これから経済の成長期待が高い所であり、あるいはそれ以外に、操業の拠点として人件費が低い途上国のような所も挙がってくるでしょう。

ところが教育の場面では、アメリカやヨーロッパなど、それこそ明治時代より留学先として好まれてきた「海外」に依然、こだわりが強いように見受けられます。例えば、高校在学中から東京大学かアイビー・リーグの大学への進学を目指し、最終的に東大より後者を選んだ、といったケースを近年ちらほらと聞くようになりました。

しかし他方で、今までのところ、同様に日本の名門大学かアジアの上位大学への進学を考え、結果的に後者へ入学したという例は乏しそうです。

 

とはいえ日本の教育界においても、一部の大学で、そうしたアジアの大学との交換留学の制度を充実させたり、個別の交流プログラムを設けて現地へ在学生を送り込んだりし始めました。

ただ現状では、こういった短期での留学が中心的で、アジアの大学が-たとえそれが各国最高峰の大学でも-欧米の有名大学のように、正規の学生として入学して長期で留学する分には、なかなか検討対象に上ってきにくいようです。

 

※ 参考例として、リベラル・アーツ教育で有名なアメリカの大学へ入り直した元・東大生による2013年の記事(東洋経済オンライン): http://toyokeizai.net/articles/-/13423/ (2015年7月18日 アクセス)

 

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